夢占いの歴史
昔から人々は夢を見て予知していたといいます。
例えばエジプト王ファラオが見た夢を、夢を解くことのできるヨセフが「七年間大豊作が続き、その後7年間大飢饉が続く」と診断しました。診断は現実のものとなりました。
ヨセフのアドバイスにより飢饉に備え食料を蓄えることに力を入れていたことによりエジプト国は飢饉に耐えることができ、国を滅ぼすことなく済んだのです。
聖徳太子は「夢殿」という建物を法隆寺につくり、政治に問題が起きたときにヒントを得ようとしたと言われています。
近代では心理学ではフロイトとユングが夢分析を研究しました。
フロイトは神経症の方などの夢を分析をし1900年に「夢判断」という本を発表しています。
そして夢での無意識の世界は「抑圧されている願望の表れ」と結論付けました。精神科医のユングも感銘を受け、初めの頃はフロイトの事を敬愛し深く交流をもちました。しかしフロイトの分析は形などを通しての性的な判断に紐付けられた解釈が多すぎ その見解の違いからユングはフロイトのもとを離れて行きました。(例えば長く尖ったものは男性、容器やくぼみのあるものは女性といった感じです。)
ユングは性的な意味の判断だけではなく、小さいころからの体験や気になった物と夢を見た人との関連性など 患者の発するキーワードの一つ一つに何ら かのヒントがあるのではと考え、もっと広い視野で無意識の世界を解釈をした方がいいと考えました。そして個人的な無意識だけではなく 神話など世界中の文化に共通する無意識(集合的無意識)があることに気がつき それをら いくつかの「元型」(アーキタイプ)というグループにわけることにしました。
ユングとフロイトの その他の点での違いは フロイトが幼少期の頃の体験ばかりを重要視したのに対し ユングは現在の体験も重視しています。つまり、小さい頃の暗い記憶ばかりを思い返さず 今ある問題が何か?を考える事が大事であり、人は いくつになっても心が葛藤しながらも 成長していくことが出来ると考えたのでした。
そして夢は1話完結ではなく一連のシリーズとして考えた方が良いとしています。
「何のために このような夢を見るのか?」とシリーズとして長い目で見ていく事によって、次第に本当の自分の欲望や気持ちに向き合えるようになり心のバランスが整えられると考えたためです。(その時は意味がわからないと思っていても、ある日急に意味がわかることもあります。)
ユングが考えた「無意識」と心の「元型」とは以下のものです。例をあげると自我(自分が考える自分)とシャドウ(自分でも認めたくない無意識の自分の姿)などの意識と無意識のバランスを整え統合していくことにより、人生の課題を乗り越え個性化(自己の発見)へと向かう事ができるのではないかとしました。
ユングの考えた大きな2つの無意識
個人的無意識 | その人だけが持っている体験などの個人による無意識。(忘れてしまっている過去の感情など) |
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集合的無意識 | ほとんどの人が持っているものへの深層心理。(伝統、神話、先祖から引き継がれてきたもの) |
元型の種類
グレートマザー(太母)
母性。偉大なる母の姿。慈しむもの。包み込む愛。女性にとっての究極の姿。その反面、子どもを束縛し過ぎる母親像。
自立をしていく際にはグレートマザーが夢の中に出てきて乗り越えていかなければならない。魔女、化け猫、海、大地、月等
オールドワイズマン(老賢人)
神。父親像。偉大なる父の姿。男性にとっての最終目標の姿。力。権威。理性。厳しさ。山、雷、仙人、学者、王様、老人等
アニマ
男性にとっての理想の女性像。男性の中にある女性的な部分。
(感情的、繊細、慈悲の心、情熱、美的感覚)
アニムス
女性にとっての理想の男性像。女性の中にある男性的な部分。
(論理的、力強さ、決断力、行動力、合理性)
シャドウ
あなたの中で抑圧された人格。嫌だと思う人間像。認めたくない自分の姿。罪の意識。
怖いイメージで現れる。幽霊、悪魔等
ペルソナ
理想とする自分、表向きの顔。社会で生活するうえで私たちは礼儀正しく振舞ったり、楽しくなくても明るく過ごしたりするなど、本音と建前を使い分けています。その表向きな姿がペルソナなのです。仮面等
このように夢ははるか昔から、人々にとって「謎めいたもの」と同時に「未来を予知するもの」、または「経験や環境からの影響を受けた自分自身でも気付くことの出来ていない深層心理の表れではないか」と考えられていたのです。そして現在でも多くの人が夢の研究や分析・診断をしているのです。